商品詳細

刀 (棟銘)源貞弘造之 昭和五十六年二月吉日

(金象嵌)あたき貞宗末代剱也 羽柴岡山中納言秀所持也

Katana [Kita Sadahiro,copy Ataki Sadamune]
No. A00542
白鞘 金着二重鎺

刃長 : 65.2cm(2尺1寸4分半) 反り : 1.6cm(5分強) 

元幅 : 3.2cm 先幅 : 2.45cm 元重 : 0.6cm 先重 : 0.45cm 

 

登録証:

埼玉県教育委員会
平成元年11月16日
国: 奈良県
時代: 現代 昭和56年 1981年

鑑定書:

銘: (棟銘)源貞弘造之 昭和五十六年二月吉日
(金象嵌)あたき貞宗末代剱也 羽柴岡山中納言秀詮所持也
形状 : 表:鎬造、裏:切刃造、三ツ棟、身幅広め・重ねやや厚く、浅く先反りつき、大鋒となる。
鍛 : 板目よく錬れてつみ、地沸微塵に厚くつき、地景太く入る。
刃文 : 小のたれ調に互の目・小互の目交じり、足入り、匂深く、小沸よくつき、金筋入り、砂流しかかり、明るく冴える。
帽子 : 表はのたれ込み小丸、裏は直ぐ調に小丸に返り、先掃きかける。
彫物 : 表は棒樋に添樋、その下に梵字、素剣、裏は二筋樋と、その下に梵字、蓮台、鍬形、素剣をともに重ねて彫る。
茎 : 生ぶ、先切わずかに丸みあり、鑢目切、目釘孔三。

説明:

喜多貞弘刀匠は、本名を弘といい、大正11年2月9日、奈良県生駒郡安堵村笠目に生まれる。昭和14年、大阪の月山貞勝刀匠に入門し、人間国宝の二代:月山貞一刀匠の兄弟子にあたる。昭和18年、海軍省御用刀匠を拝受、同年、軍刀展に出品入選する。昭和22年、奈良県生駒郡で刀剣を鍛錬、昭和38年、文化庁より作刀承認を得、39年から新作名刀展に出品し、入選5回、努力賞・奨励賞・毎日新聞社賞などを受賞する。昭和46年、奈良県無形文化財保持者に認定される。作位は郷土である奈良県ゆかりの大和伝と、月山一門が得意とする相州伝にあり、特に正宗や貞宗ら相州上工の写し物を狙ったものに地鉄と沸の妙味が発揮された優品が多い。

 本喜多刀匠が製作された所謂『享保名物』安宅貞宗写しで、形状は表は鎬造、裏は切刃造となった片切刃造という特徴あるものとなっている。彫物は、表は棒樋に添樋、その下に梵字、素剣、裏は二筋樋と、その下に梵字、蓮台、鍬形、素剣をともに重ねて肉彫となる。茎も忠実に再現されており、「あたき貞宗末代剱也 羽柴岡山中納言秀所持也」の金象嵌が精巧に施されている。安宅貞宗の本歌は惜しむらくも明暦3年(1657)の大火で焼失してしまい、往事を知る術は古押形と、越前康継の手により写しが数振か現存していることに拠る他にない。越前康継の初代・二代らの安宅貞宗写しは数振が残されているが各々が少なからずのアレンジが加えられており完全な写しというものは無いが、喜多刀匠の本作は「光温刀譜」に所載する安宅貞宗の往事を忠実に再現している。地鉄は、よく錬れて鉄に潤いが感じられ地沸が厚くつき地景が太く入り、刃文は、よく錬れた地鉄に刃沸がよく絡み様々な景色を織りなし、古作:彦四郎貞宗の妙味が感ぜられる優品となっている。

 


 

<安宅貞宗について>

『享保名物帳』所載の刀。「安宅切り」とも。またの名を「水に降る雪」というのは、雪が水のうえに降って消えるのは、吸い込まれるようだから、刀が吸い込まれるように切れることを意味する。刀号の由来は、『享保名物帳』によれば、岩成主税助友通が安宅摂津守冬康を、これで切ったから、という。冬康は永禄7年(1564)5月9日、兄:三好長慶方の刺客によって殺された。すると、その刺客こそは岩成主税助で、この貞宗で切ったことになる。しかし、『本阿弥光柴押形』によれば、三好山城守入道笑岩(岸)が、安宅甚八郎一倍を斬ったから、という。安宅甚八郎は冬康の子かも知れない。史上に名の現れない人を挙げているところを見ると、この説が真実かも知れない。笑岩は早くから豊臣秀吉に款を通じていたので、これを豊臣秀吉に献上したのであろう。秀吉は前田利家の邸に臨んだとき、「三池小伝太、切刃貞宗、水に降雪(安宅貞宗)等の刀を授け」た。それをまた秀吉に献上したとみえ、慶長3年(1598)6月2日、小早川秀秋に与えた。

小早川秀秋はよほど気に入ったとみえ、「あたき貞宗末代剱也 羽柴岡山中納言秀所持也」と金象嵌を入れさせた。秀は秀秋の前名であるが、古押形では「秀」と読める。なお、「秀家」とした古剣書もあるが、それは誤読である。その後、徳川将軍の宝庫に入ったが、明暦3年(1657)の大火で焼けたとみえ、『享保名物帳』では「焼失之部」に入れてある。しかし『本阿弥光柴押形』や『本阿弥光温刀譜』から、面影を知りうる。佩き表は切り刃造りで、素剣・鍬形・蓮華・梵字・二筋樋を彫る。裏は鎬造りで、素剣・梵字・刀樋に添え樋がある。刃文は湾れに互の目まじり。中心は大磨り上げ無銘、「あたき貞宗末代剱也 羽柴岡山中納言秀所持也」の象嵌銘銘が入る。

(日本刀百科事典:福永酔剣著より)

 

『享保名物帳』

御物 安宅(貞宗) 磨上 長さ弐尺壱寸五分 無代

水に降(る)雪とも云。安宅冬康卿を岩成主税と云者此刀にて打(つ)。表樋影樋区より上にて留る。鎺下中心に梵字剱、裏切刃、表裏より細し、并(に)影樋区より五寸斗上にて留(む)、梵字、蓮華、鍬形、剱鎺より上へ出る。中心に安た(き)貞宗末代剱(也)羽柴岡山中納言秀所持(也)と象嵌に入(る)。

 

越前康継による写し物

刀 越前国康継(初代) 二ツ胴落末世剣是也 なんばんくろがね
あたきさだむねのうつし 本多飛騨守所持内

 

刀 (葵紋)以南蛮鉄越前康継(2代)
(金象嵌) あたき写 大袈裟落

 

備考:

処々に僅かに小さな薄錆がみられます。

白鞘の柄部分の下部に染みがみられます。

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